投資した株式や投資信託の譲渡益や配当が非課税となるNISA制度。利用している方も多いかと思います。
そんなNISA制度が2024年から改正されるというニュースが飛び込んできました。
▶︎外部リンク:NISA年間投資枠360万円に拡大了承 自民税調幹部会合(日本経済)
どのような点が変更されるのか、我々はどのような戦略をとれば良いのかという点について解説します。
- 現在NISA制度を利用していて改正点を知りたい
- これからNISAを始めようと思っている
- 老後資金の形成方法が気になっている
一般NISAとつみたてNISAを同時利用できる
一般NISA or つみたてNISA → 同時利用可能に!
これまでのNISA制度は一般NISAかつみたてNISAどちらかを選んで投資を行うという制度設計となっており、同時利用をすることはできませんでした。
しかし、新NISA制度では、一般NISAとつみたてNISAの同時利用ができるようになる模様です。
一般NISAは譲渡益目的の株式や配当目的の株式、つみたてNISAやインデックス投信といった形で、投資目的が異なっていたため、同時に利用できるようになることでより幅広い選択肢を得ることができるようになることが期待されます。
なお、一般NISAは「成長投資枠(仮)」という名称に変更となる模様です。
年間投資枠が拡大する
一般NISA:120万円/年 → 240万円/年
つみたてNISA:40万円/円 → 120万円/年
一般NISAは年間120万円までという投資枠が年間240万円と2倍に、つみたてNISAは年間40万円までという投資枠が年間120万円までと3倍に、投資枠が拡大される予定です。
例えばつみたてNISAで考えると、これまでは月33,333円の投資が限度額でしたが、新NISAでは月10万円が限度額になると考えると非常に大きな増加となります。
投資は基本的に余剰資金で行うものという考えを私も支持しますが、毎月10万円を投資に回せる人はそう多くはないかもしれません。そのため、これは富裕層に有利な改正なのではないかという疑念も生じます。ただしこれは後述する生涯投資枠を定めることで、毎月の投資額が少ない方にも不利とならないような制度設計が考えられています。
生涯投資額が拡大する
一般NISA:600万円(120万円/年×5年間)
つみたてNISA:800万円(40万円/年×20年間)
→ 1800万円
これまでは一般NISAが年間120万円×5年分=600万円、つみたてNISAが年間40万円×20年間=800万円が投資限度額でした。新NISAではこれが合計1800万円へと拡大します。当初は1500万円と報道されていましたが、その後拡大していました。
この生涯投資額を設けることで、毎月の投資額が多額の方にも少額な方にもある程度公平となるように配慮されています。
もちろん、毎年投資対象が成長するという前提で考えると、多額の投資を早いうちに行った方がその後の投資増加額も大きくなります。しかし投資対象はあくまでリスク資産であり、下落する可能性もあるため、日常生活に支障をきたしてまで投資額を多額にするということは推奨できません。早い内に多額に投資して複利効果で大きく成長した、それは一つの結果論に過ぎません。自分のできる範囲で投資を行うことが大切かと思います。
なお、生涯投資枠1800万円の内、1200万円は成長投資枠の商品に投資できるという報道があります。これは成長投資枠の限度額が1200万円でつみたてNISAの限度額が残りの600万円なので、それともつみたてNISAだけで1800万円まで投資することができるのか、どちらを指しているのか現在の報道では不明です。それぞれによって大きく戦略が変わると思われるので、今後の報道も注目したいと思います。前者だったら現在より投資限度額が減ってしまうのでまずないとは思いますが。。
非課税期間が恒久となる
一般NISA:5年
つみたてNISA:20年
→ 恒久に!
今回の改正で最も大きな良い改正だと思います。
これまでの制度では、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年と非課税となる期間が制限されていました。それが恒久となる見込みです。
これはつまり、売却時の価格下落リスクを大幅に減らすことができるということです。
従来のNISA制度で最も懸念とされていたのが、非課税期間終了間際に暴落が発生した場合にどうするかという点でした。特につみたてNISAについては非課税期間が20年と長期に渡っており、売却時は老後資金として用いることを想定している方も多いのではないかと思われます。
そのような非課税期間の終了間際、いよいよ売却しようと考えた際に暴落が発生した場合、商品は含み損となっているが、非課税期間が終了してしまうためやむなく売却というのが最悪のケースです。この場合、貴重な非課税枠を無駄に使用してしまうことになってしまうのです。
しかし、非課税期間が恒久となれば、仮に暴落した場合でも、相場が回復するまでじっくりと待って、非課税枠を有効活用することができるのです。
売却を急ぐ必要がなくなる。これは投資を行う上で非常に大きなメリットとなるのではないでしょうか。
我々はどのような戦略をとればいいのか
新NISA制度へと改正されるに際し、我々はどのような投資戦略をとればいいのか。
結論としては、これまでと変わらず、できる範囲で地道にコツコツと投資を行っていけばいいのではないかと思います。
年間投資限度額が拡大することで、もっと投資をしなければ損になってしまうという気持ちになる方もいるかもしれません。しかし、投資対象はリスク資産であり、下落リスクを常に抱えている商品です。そのような投資対象に日々の生活バランスを崩してしまうほど、リスク許容度を超えてしまう程の多額の投資をしてしまうと、常に投資商品の価格が気になってしまうなど精神状態にも影響し、日常生活にも悪い影響を与えかねません。
もちろん資金に余裕があり、投資限度額ギリギリまで投資できる方は最大限投資枠を活用すればいいと思います。しかし、そうでない方も自分を決して卑下することなく、コツコツと投資することでいずれは生涯投資額である1800万円へと到達するかと思います。最終的にリスク資産が1800万円。十分多額な資産に成長するのではないでしょうか。
私はこれまで通り、インデックス投資信託のつみたてNISAを中心に活用する予定です。毎月10万円は厳しいですが、現在の毎月33,333円よりは多少増やした金額で、自分のお財布とリスク許容度と相談しながら地道にコツコツ楽しく投資を続けていく予定です。
おわりに
少子高齢化による増税や社会保険料の増加ばかりが叫ばれる昨今において珍しく良い改正になりそうな予感です。
しかし、これも結局は現在老後生活資金の中心となっている年金制度が少子高齢化により存続に暗雲が立ち込めていることから行われた改正かもしれません。つまり、国はあなたたちの老後の面倒を見ることはできないので、自分でどうにかしてください、という自助努力を促すメッセージかもしれません。しかし、見方を変えれば自分で自分の資金を運用し、最終的に自分に還ってくるというのは、賦課年金制度となっている現在の年金制度よりも幾分健全なものとなるのではないでしょうか。
一方で、政治的に法律で定められた制度である以上、改正改悪のリスクは十分にあります。今後もしっかりと学び続け、情報感度を上げてその時代時代で常に最良の選択をして制度や法令を上手く使いこなして生きていきたいと思います。
どこかの誰かのお役に立てば幸いです。