【読了記録】おカネの教室【#008】

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お金の本質を知りたい。経済の仕組みを学びたい。

そんな知的好奇心を昔から胸に秘めています。

これまでも数々の書籍を読んできましたが、また新たに良書に出会いました。

それが「おカネの教室」です。

その名の通り、「おカネ」について学ぶことができる書籍なのですが、物語形式になっていて非常に読みやすかったです。

しかし侮るなかれ、お金とは何かという本質的な疑問から、経済の仕組み、資本主義、そして福祉の成り立ちなど、社会のコアとなる部分が網羅されている良書です。

今回は、特に印象に残った4点に着目して記事にまとめましたのでシェアします。

本書はこんな内容です
  • お金を得るための方法は6種類ある
  • 世の中の仕事は、「かせぐ」「もらう」「ぬすむ」の3種類に大別できる
  • お金の本質は信用である

概要:そろばん勘定クラブへようこそ

「おカネ」とは一体なんなのか?

本書は庶民代表の男子中学生”サッチョウさん”と、お金持ち代表の女子中学生”ビャッコさん”が、それぞれ不本意ながら加入したそろばん勘定クラブで謎の長身男性”カイシュウ先生”からお金の本質、流れ、そして経済について学ぶ青春経済物語です。

2人の中学生がカイシュウ先生から学ぶというストーリーで、3人の会話を中心に物語が進む構成となっていす。まるで読者もカイシュウ先生の講義の参加者になったような気分になることができ、非常に読みやすくわかりやすい1冊でした。

資本主義というシステム

我々の社会は資本主義という仕組みを採用しています。そのもっとも大事な土台は、社会に貢献した企業や人が正当な評価を受けること、です。

引用:本書5時間目-もうけは銀行家、損は国民に

日本でも採用されている資本主義という仕組みは、資本つまり利益を追求することを是とする仕組みです。

そのため、結果に応じてリターン、つまり給与といった恩恵は異なっています。

後に記載しますが、本書ではお金を手に入れる方法を6種類に分別しています。

その内代表的な手段として「かせぐ」「もらう」「ぬすむ」の3種類が示されています。

これらはその言葉通りの意味ではなく、社会への貢献度合いによって分類されています。

つまり、富の増大に人並み以上に貢献した場合は「かせぐ」。人並み程度に貢献した場合には「もらう」。むしろ害悪に近いような方法でお金を得る場合には「ぬすむ」と考えられています。

社会への貢献度合いが高い程、より多くのリターンを得ることができる。これは納得感がありますし、異を唱える方はいないかと思います。

しかし、この資本主義が完璧なシステムではないことを忘れてはいけません。

確かに資本主義のシステムによって世界は非常に豊かになりました。日本でも失われた30年とは言いつつも、私が生きているほんの30年間でも科学技術が大きく発展し、非常に便利な世の中になったことを感じます。

その一方で、格差の拡大が大きな問題になっています。これは資本主義の明らかな問題点と言えるでしょう。更に社会への貢献とリターンは適切なバランスとなっているのでしょうか。需要と供給や情報の不確実性という原理が働くために、社会への貢献度合いとリターンにアンバランスさが生じ、「かせぐ」ような仕事よりも「ぬすむ」仕事の方が大きな報酬を得るケースが多数生じています。

これは決して健全な社会とは言えないのではないでしょうか。

資本主義の仕組みをしっかりと理解し、メリットは生かしつつも問題点を解決するために行動する。これが現代社会のメインプレーヤーとして生きる我々の義務であり、生きる理由なのかもしれません。

ニーズと価値

稼ぐカネの多寡で人間の存在意義を図るなんて馬鹿げた話です。人間に対する冒涜です。GDPが増えるか減るかで人を切っちゃいけない。

引用:本書9時間目-キーワードは「持ち場を守る」

資本主義が前提となる一方で、上記のように稼ぐお金の多寡で人間の価値を測ることは間違っているとも言っています。

本書でいうところの、「かせぐ」人は「もらう」人よりも偉いのでしょうか。

本書ではそんなことはないと明確に否定しています。

私はこれに全面的に同意します。

「かせぐ」か「もらう」かはあくまで資本主義というシステムに対して貢献力が高いかどうかです。前提やフィールドが異なったら、結果が変わる可能性もあります。

一つの前提条件を絶対的な判断基準として考えてはいけないと思う。ましてや、それが人間性の全てを測れるかのごとく考えるのは、間違っているし、非常に悲しい考え方ではないかと思う。

引用文のキャプチャータイトルにもありますが、重要なのは自分の「持ち場を守る」こと。つまり、自分にできることにベストを尽くすこと。

それが、資本主義の場合、富の増大への貢献度合いが高ければその分高いリターンを得ることができるだろうが、それが同時に人間としての価値を測る度合いになるわけではないことを忘れてはならない。

例えば原始時代であればより多くの肉を狩猟できる人が尊敬を集めるでしょうし、弥生時代は多くの農作物を育てることができる人が影響力を及ぼすでしょう。

しかし、これらも自分の得意分野が時代のニーズやコミュニティのシステムにマッチした結果であり、それが唯一の人間としての価値というわけではありません。

どの時代でも、間違いなくシステムは密接に絡み合っていて、1人の人間で成り立つものではありません。その時代で追求されているモノを持つ人は羨望の的となることは間違いありませんが、それが人間としての価値全てではないことを忘れてはいけません。

what is money?

お金を根底で支えるのは、『誰もがこれをお金と認めるだろう』という幻想です。この幻想は、人類が明日も明後日も来年も10年後もおおむね平和に暮らせるという希望に支えられています。

引用:本書18時間目-6番目の方法

お金が欲しくない人はいないでしょう。

ではそもそもお金とは一体何者なのでしょうか。

現代のお金は紙でありったり鉱物を加工したものであったりします。それ自体に価値があるわけではありません。

しかし、人間はそれに価値があるものと認め、奪い合っています。

それは皆がお金に「価値がある」と考えているからです。

つまり、人々の「価値がある」という考えが具現化されたものがお金ということですね。

引用文にもありますが、価値があると考えることができるのは、その発行主体、つまり国が未来永劫平和に発展するという前提があるからですね。日本円が安全資産と言われたり、治安の悪化した国の通貨が大幅に安くなるのは、このような前提があるためです。

つまり、お金の仕組みは平和の産物であるとも言えるのかもしれません。

第二次世界大戦後に、平和な時代が続いたことで資本主義経済が発展し、どんどん便利な世の中になりました。そして恩恵を受けるばかりではなく、お金の仕組みをしっかりと理解し、経済の発展を社会の繁栄を次の世代へ繋げる責務が我々現役世代にはあると改めて感じました。

おカネを手に入れる方法とは

かせぐ

ぬすむ

もらう

かりる

ふやす

???

引用:本書表紙及び2時間目-お金を手に入れる6つの方法より

お金を手に入れる方法は大きく6種類あると本書では紹介されています。

多くの方が得ている給与所得も、本書中では「かせぐ」「ぬすむ」「もらう」の3種類に分類されています。前述の通り、自分の仕事が「役に立つか」という点で分類されています。

私は働いてもらうお金はすべて同じものだと思っていたので、この考え方は新たな感覚でした。

いくら高いお金を得る仕事であっても、世の中の役に立っていなければ、それは世の中からお金を「ぬすむ」ことと同義である。本書ではそう考えられています。

願わくば、自分の仕事が「かせぐ」「もらう」ものであってほしいものですね。

最後の6つ目は何なのでしょうか?それは是非とも本書を実際にご覧になって確かめてみてください。そこには経済の本質が隠されています。

まとめ:おカネからもたらされた幸せと不幸せ

伏線も綿密に練られていて、読み物としても非常に面白い本でした。

登場人物たちの会話中心に物語が進むので、お金の本質や経済の仕組みを非常に分かりやすく理解することができます。お金や経済について学びたい大人はもちろん、中学生くらいでも十分に理解できる内容かと思います。

この四半世紀、世界で大きな戦争は起きていない。『平和の配当』という言葉があります。軍備に浪費されるはずだったその平和の配当をうまく使い、より良い世界を作るチャンスがあった。でも、そういう道を我々は選ばなかった。

引用:本書-課外授業

最終章で、カイシュウ先生の独り言として現代社会での経済的な問題点が語られていました。これは著者の本心を記した一節なのかもしれません。

「おカネ」という仕組みのおかげで非常に便利で暮らしやすい社会になっています。しかしその一方で、格差の拡大や貧困化といった新たな問題も発生しています。

当事者意識をしっかりと持ち、世界をより良くした形で次の世代へ受け継がせたい。この時代に生きる1人として、僭越ながら思ったりもした1冊でした。

どこかの誰かのお役に立てば幸いです。

シェアしてもらえたら嬉しいです

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