前々から気になっていた本ですが、ようやく読むことができました。
いかにして筆者はアーリーリタイアを達成することができたのか。その方法が惜しげもなく紹介されています。
普通に生活していたら考えつかないようなことも数多く紹介されていましたが、非常に学びとなった部分と、自分の意見とは異なるように感じた部分があったので、思考整理を兼ねてまとめてみました。
読後の正直な感想としては、こんな生活を送りたいと思う羨望と、本当にこんなことができるのかという疑念が入り混じった思いになりました。しかし、著者は非常にロジカルにFIRE達成のための方法を説明していることもあり、強い意思があれば再現性のある方法なのだと思います。
- FIREを達成したい
- 旅をしながらの生活を送りたい
- お金がほしい
Contents
概要:FIREとは
FIREとは「Financial Independence Retire Early」の頭文字をとった言葉であり、経済的に自立してアーリーリタイア、つまりは早期に退職をすることで、昨今若年層を中心に大きな注目を集めています。
本書では、「資産の4%で生活費を賄うことができればアーリーリタイアできる」と結論付けられています。
本書の著者がFIREを達成できたのは、世帯年収が12万ドル(約1,200万円)を超えていたり、文中で「欠乏マインド」と著者が呼んでいるような異常とも言えるお金に対する貪欲さがあってこその部分もあり、完全にこの著者の生活や考え方を再現することは難しいと思えました。
しかし、著者に学ぶ部分も多く、取り入れることことで資産構築に非常に有用となるであろう知識が大いにあったことは間違いありません。
この記事では、特に学びとなった箇所を2つ。そして疑問符がついた箇所を2つ紹介しています。
学び①:重要なのは収入額ではなく貯蓄率
リタイアまでの期間は、あなたの年収に左右されるわけではありません。あなたの貯蓄に左右されるのです。
引用:FIRE 最強の早期リタイア術-第10章
著者の年収は12万ドル以上であり、それを聞くとそのような高収入の著者だからこそ、FIREは達成できたのではないかと感じてしまいます。
しかし、著者は本書内において、年収に関係なくFIREは達成できること、そして重要なのは貯蓄率であることを紹介しています。
つまり、貯蓄率が上がればその分生活費が下がるという前提で考えると、収入ではなく貯蓄率こそが必要な資産を構築するための年数に影響を与えるということです。
例えば、年収が1000万円であっても、その内生活費に900万円を使用していた場合、4%ルールに従うとFIREをするために必要な資産は2億25百万円となります。この場合毎年の貯蓄率は10%、そして貯蓄できる金額は100万円であるため、利回りを考慮しないで考えると、資産構築までに225年かかると計算されます。
一方、年収500万円で生活費が400万円だった場合、4%ルールで計算したFIREするために必要な資産は1億円となます。この場合毎年の貯蓄率は20%、そして貯蓄できる金額は同じく100万円でありますが、資産構築まで100年かかると計算されます。
どちらも利回りを考慮していないため現実的な年数ではありませんが、年収が半分であっても貯蓄率が2倍となると、資産構築までの年数がなんと半分以下となります。
これは非常に大きな学びとなりました。資産を構築するためには収入額が多ければ多いほど良いと思っていたのですが、そもそも生活費が低ければ、必要となる資産金額も少なくて済むのです。まさに逆転の発想です。
学び②:モノは人を幸せにするのか
より多くのモノを所有するほど、人はより不幸になり、よりストレスを抱えるということです。逆に、より少ないモノを所有し、旅行や新たなスキルの習得など経験によりお金を使うほど、人はより幸福になり、より人生に満足するのです
引用:FIRE 最強の早期リタイア術-第6章
本書では、モノを多く所有するほど人は不幸になると断言しています。
これには私も大きく賛同しています。この理由は、人の欲望や幸福には際限がないためだと思っています。
モノを所有すことで一時的には非常に大きな幸福感や満足感を得ることができますが、結局すぐにそのモノがある状態に慣れてしまいます。そしてそのモノを手に入れた際の幸福感や満足感を再び味わいたいがために、何度も購入をしてしまうのです。
ブランド物の商品や、アイドルなどにハマり、何度も同じような品を購入してしまった経験は誰しも一度はあるのではないでしょうか。
また、モノを所有することはその分コストがかかります。
例えば服を所有するとクローゼットの場所が必要になりますし、洗濯やクリーニングの手間や費用がかかります。家を所有すると、修繕費、税金といった実際の支出とともに、管理の手間が必要となります。実際の支出がかからなくとも、時間を取られてしまうものはコストです。
このように、モノを所有するということは、必ずしも幸せなことばかりではありません。
「足るを知る」という言葉がありますが、幸福に際限がない以上、いかに現状に満足することができるか、いかに現状が幸せな状態かを知ることが、モノに頼らずに幸せな生活を送ることにつながるのではないでしょうか。
疑問符①:住宅を購入してはいけないのか
持ち家には住宅ローン以外にも様々な追加費用が発生し、不動産価格の上昇に伴う利益の大半は相殺されます。
引用:FIRE 最強の早期リタイア術-第7章
本書で著者は、住宅ローンにより住宅購入を明確に否定しています。その理由は、住宅を購入すると様々な費用が発生し、仮に売却時に利益が発生したとしても、それらの費用で利益の大半が相殺されてしまうためと説明しています。果たしてそれは購入することを否定する理由となり得るのでしょうか。
確かに購入、維持、売却の際には費用が発生し、利益はほとんど消えてしまうかもしれません。しかし、この計算ですと本体価格部分のことが無視されているのではないかと思いました。
例えば売却した際に利益が費用と相殺されるとしても、利益が出ているということは、本体価格として支払った金額は回収できているということです。つまり、賃貸だったら賃料として払ったきりだった金額、つまり住宅ローンの返済金額が丸々戻ってくるということです。
利益が出なくとも、住宅ローンの返済金額が丸々戻ってくるということは、購入時から売却時までタダで住むことができたということになります。これは非常に大きな金銭的メリットとなるのではないでしょうか。
また、金銭的メリットだけでなく精神的なメリットもあるように思えます。
マンションで考えると、一般的に賃貸より分譲の方が内部設備が良いので、その分生活の質、つまりQOLが向上します。単純に間取りや立地とそれに対する金銭的な支払いだけを考えてしまうと、その快適さに対して支払う費用を無視していることになります。
例えば、計算上は賃貸の方が金銭的に支払う金額は少ない場合、確かに金銭的な面だけを考えると分譲を選ぶ理由はないかもしれません。
しかし、室内設備や共用部の設備が自分の満足できるものを兼ね備えていたとしたら、果たしてどちらを幸せを感じるのでしょうか。
住宅は毎日必ず使用するものですし、価値観や感じ方も人それぞれです。金銭的な面だけでなく、自分がどんな家や部屋に幸せを感じるかという精神的な面を考慮に入れてもいいのではないかと感じました。
疑問符②:子供がいても旅をしながら生活できる
これまでは引っ越しを重ねて学校を数年ごとに変えることによって、子どもたちが友だちをつくって友情を維持する能力を損ねてきたかもしれませんが、最近はインターネットを通してつながることが容易になり、引っ越しはそれほど大きな問題ではなくなりました。
引用:FIRE 最強の早期リタイア術-第15章
本書では子供がいてもアーリーリタイアして旅行しつつの生活を送ることができると紹介されていますが、その点についても疑問を覚えました。
確かに特定の学校に通わなくても義務教育で定められている内容を学ぶことができれば目的を達成することはできますが、学校に通うことで学ぶのは各教科の内容だけでしょうか。
人間関係であったり、集団生活を通した社会生活、更には各種イベントに参加することが人格形成や自分の興味関心を知ることにつながるのではないでしょうか。特定の学校に通うことのない、旅をしながらの生活では、このような経験をすることが非常に困難になるのではないかと思いました。
また、本書で紹介されている論理は、環境変化を子供が耐えれる前提で話が進められてしまっています。
特定の場所で生活して学校に通わない生活を送るということは、常に生活環境や人間関係が変わり続けるということです。そのような環境の変化に、果たして全ての人間が耐えることができるのでしょうか。
一方、現代はインターネットがあるので環境が変化しても人間関係を維持することができるとも紹介されていましたが、それはそう簡単なことではないと感じます。例えば、フェイスブックで繋がっている学生時代の同級生といつまでも関係が学生時代のまま継続しているケースの方が少ないのではないでしょうか。
結局、インターネットがあるからといって、共通項がないと人間関係を維持することは難しいと私は考えています。それは特定のモノやテーマだけでなく、同じ学校に通って同じ空間で時間を共有するということでも、関係を維持するのに十分な共通項となるのではないかと思います。旅をしながらの生活では、そういった「同じ時間を共有する」といった経験ができず、人間関係が希薄になってしまう懸念があると感じました。
まとめ:いかにお金を手段として使えるか
利回りシールドや現金クッションという方法を編み出し、元本となるポートフォリオが減少させないための方法が考え尽くされていた点は脱帽でした。
一方で、当初は資産を貯めることが目的となるかもしれませんが、それ以上にいかにお金を自己実現のための手段とすべきかということが重要ということも感じました。
著者は現在、毎日自由に旅行をしながら生活していて、そうすることに生きがいを見出しているように感じました。
しかし全ての人がそのような生活に幸せを感じるかはわかりません。少なくとも私はおそらく環境の変化に疲弊してしまうのではないかと予想されます。
真の創造力を発揮するには、制約が必要だからです。もしあなたが小説を書こうとしたことがあるのであれば、私の言っている意味がわかると思います。真っ白なパソコンの画面の前で作業を始めると、ひどく気が滅入ります。どの方向にも行ける状態だと、筆が動かなくなるのです。
引用:FIRE 最強の早期リタイア術-第2章
あまりにも自由すぎる生活は、逆に行動が妨げられ、不自由な生活になってしまうのかもしれません。ちょっとひねくれ過ぎでしょうか。もちろん私も働かないに越したことはないと思っていますが。
本書でも度々紹介されていますが、重要なのは「それぞれに合ったやり方」で取り組み、「それぞれに合った生活」を送ることなのかもしれません。
私も生活費を全て賄うアーリーリタイアとまでは行かなくとも、精神的な余裕を持てる程度の所得形成ができるくらいの資産構築は達成したいなと考えています。
自分のやりたいことで少しのお金を稼ぎ、生活するのに不足する部分を資産から生み出す。そんな生活が理想なのです。
記載内容への疑問点もたくさん書き連ねてしまいましたが、FIRE達成のための方法はもちろん、多くの学びがあった一冊でした。
どこかの誰かのお役に立てば幸いです。